罪を犯した息子と父親の果てない葛藤【Aではない君と】

Aではない君と / 薬丸岳

 

こんばんは、soraです。

【読書記録】

感想は素人の主観であってあくまでただの感想ですので、悪しからず。

 

今回もネタバレ無しですが途中、内容に触れることはあるかもしれませんのでまっさらな状態で読みたい方は感想スルーでおねがいします。

 

これを読んで作品に興味を持っていただけたら光栄です。

 

(敬称略)

 

今日の読書記録、

『Aではない君と』薬丸岳

 

Aではない君と (講談社文庫) 

 

薬丸さんの作品はまだ2作目ですが初めて『友罪』を読んだときの衝撃が忘れられず、すっかり著者に魅了されてしまっています。 

sora1530.hatenablog.com

 

私が薬丸作品に期待するものはどうしても『友罪』と類するものになりますが、今回も『友罪』と比肩する、あるいはそれを超える満足感です。

 

あらすじ

あの晩、あの電話に出ていたら。同級生の殺人容疑で十四歳の息子・翼が逮捕された。親や弁護士の問に口を閉ざす翼は事件の直前、父親に電話をかけていた。真相は語られないまま、親子は少年審判の日を迎えるが。少年犯罪に向き合ってきた著者の一つの到達点にして真摯な眼差しが胸を打つ吉川文学新人賞受賞作。(内容(「BOOK」データベースより))

 

 

 

以下、ネタバレありません

 

 

 

少年犯罪、勾留、家庭裁判所、鑑別所、少年院。

そういったものとは縁はなく、建設会社に務める主人公、吉永。

吉永は離婚していたが、一人息子がいた。

ある日息子から電話がかかってきたが出られなかった。

数日後、息子が遺体遺棄容疑で逮捕される...

 

"少年A"となってしまった息子は、罪は認めるものの贖罪の気持ちを見せず、調査官にも、両親にも、自分を守ってくれる弁護士にもなにも話そうとしない。

誰もが彼とどう接していいかわからず途方に暮れる中、「お父さんとふたりきりでは会えないの?」と口を開く。

保護者の面談は立会人が必須...

少年法10条1項 少年及び保護者は、家庭裁判所の許可を受けて、付添人を専任することができる。

      2項 保護者は、家庭裁判所の許可を受けて、付添人となることができる。

 

様々な苦悩と葛藤を抱えながら息子に向き合おうとする吉永。

 

終盤までは事件の真相が知りたい欲求も手伝って先に先に読み進めたくなってしまうほどに引きこまれました。

後半は苦しくて読むのが辛かったです。

苦しくて苦しくて涙がにじみ出てきました。

 

この小説はミステリですが、事件の真相についてはある程度推理できてしまいましたので多くの人が同じように推理できてしまうと思います。

しかし、この物語の本質は第三章にあると思います。

週刊連載時は第二章で完結していて、単行本化の際に第三章が加筆されたらしいです。

 

私の勝手な妄想ですが、この結末を構想して書き起こすのに週刊連載には不向きだったのではないかと思います。

今こうしてこの結末を読むことができてよかったです。

おそらく忘れることはできないと思います。

それどころかいずれ結婚、そして子どもを持つことになった時には今作のような"もしも"に悩まされ続けることになりました。

どんな終わりが正解だったのかはわからないですし、たとえわかったとしても"贖罪"という大きなテーマは人によって、その人の立場によって違うものになってしまうと思います。

子どもを持たない人生を歩むとしても、自分と親との関係に当てはめてしまいます。

 

薬丸さんの作品は決して生易しいものではないと痛感させられました。

 

ただこの小説からは薬丸さん自身の優しさも感じられました。

少年犯罪や少年審判、そういったものを知らない吉永と一緒になって読者も知識を蓄えながら読み進めていくので聞き馴染みのない言葉であっても読みづらさは感じません。

そんなことよりも続きが気になって仕方がない。

 

『友罪』と同様、"贖罪"に大きな焦点を当て、登場人物たちと同じ苦悩や葛藤を読者に抱えさせる最高の物語だと思います。

"贖罪"というテーマを考えていくのは永遠に物語が終わらないというのと同議だと感じました。

 

何度でも読み返すのは間違いないです。

ますます薬丸さんの作品を読みたくなりました。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

Aではない君と (講談社文庫) 

 

前回の読書記録と『友罪』の読書記録はこちらからどうぞ。 

sora1530.hatenablog.com

 

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